2012年5月16日水曜日

「LED電球の光が真っ直ぐに進む」のは当たり前

LEDランプの光が従来の白熱電灯とは異なって「真っ直ぐに進む」とか「直進性が高い」とか、よく言われます。

先日もガラス工芸をやっている人と話した際、LEDの光は真っ直ぐに進むので、ランプシェードに使うにしても、今のところかなり工夫しなければ使いづらい、というような話がありました。LEDランプに関してこういう認識はかなり一般的になっているようです。しかしよく考えるとこういう表現はおかしな話で、光が直進するということは誰でも小学校の理科の時間に習って知っているはずです。光はどんな光であっても直進するのは当たり前ではありませんか?

ネットで検索してみると指向性と拡散性という表現を使っている例もあります。これが正しい表現でしょう。つまり、電球の正面方向に向かう光量が多く、側面の方は暗くなるということであて、これは「光の直進性」とは何の関係もない筈なのですが。


これは恐らくLEDランプの発光体の構造によるものでしょう。とくに以前からあるようなイルミネーションや機械のパイロットランプに使われる豆ランプ型のLEDではなくて電球として使われる白色のLEDランプではLEDに蛍光物質の発光体が組み合わされていて、それが平面状であるため、前方に向かう光の光量が多いのだと思います。

ところで、「直進性」は光自体の持つ性質といえるように思われますが、「指向性」に関して光そのものにそのような指向性があるとは考えにくい話です。どう考えても光そのものではなく、光を発する発光体の構造や仕組みに原因があるとしか考えられません。LEDの原理、仕組み事体にそのような要素があるのかというような専門的なことはわかりませんが、少なくとも現在のLEDランプの構造にそのような要因があることは確かに思われます。

しかし殆どの人はLEDランプそのものではなく、あくまでも「光」を主語にして話をします。それで「真っ直ぐに進む」ではなく「前方への指向性がつよい」と適切な表現をする場合でも「光」を主語にするために何か光自体が指向性を持っているかのような印象になってしまいます。

個人的にはこのこと、つまり「光」を主語に指向性や拡散性を云々することに違和感を持つものですが、少なくとも「(白熱灯に比べて)真っ直ぐに進む」とか「直進性が強い」というような表現は止めてもらいたいと思います。

最初にこういう表現をしたのはやはりジャーナリストなのでしょうか。技術関係の評論家かジャーナリストなのでしょう。あるいは技術者自身が素人にわかりやすく説明するためにこのような表現をしたのでしょうか。

いずれにせよ、科学的な考え方を理解するにしても、科学そのものについて考えるにしても、このようないい加減な言い方は努力して是正してゆくべきではないでしょうか。

ジャーナリストや評論家の責任は大きいと思います。

【2013/8/29 追記】
次回の記事「LED電球の光がまっすぐに進む」と言われることと「鏡像問題」との奥深い関係」(2012/6/06)も是非お読みください。







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