2013年1月17日木曜日

一行の一覧性は横書きが優れるが、ページの一覧性は縦書きの方が優れている ― 縦書き及び横書きの機能性の差異と鏡像問題その6

前回同様、「縦書き及び横書きの機能性の差異と鏡像問題」の補足記事です。以前、一覧性においては横書きが優れているのではないかと書きましたが、その若干の修正になると思います。


このシリーズの最初の記事で述べたことですが、縦書きが読み取りの確実性、正確性の点で優れるのに対して横書きは一覧性と速読性において優れる面があると思われます。しかし一覧性について言えば、これは一行の読み取りに関することであって、ページ全体の一覧性について言えば、縦書きの方が優れているように思われます。これは一般的に言って縦方向よりも横方向の一覧性が優れているとすれば当然のことともいえますが、これはこれではっきりと指摘しておく必要があるものと思います。

一般に縦方向の一覧性よりも横方向の一覧性が優れていること自体は映画やテレビ、PCディスプレイの殆どが横長であることからも明らかで、殆ど自明のことであると言えるかもしれません。絵画の額縁や写真の場合も殆どが横長です。イメージでは文章よりも一覧性が要求されますから、これは当然のことでしょう。一方、文章の場合、書物の見開きではたいてい横長になりますが、1枚のシートでは、現在では縦長が標準のようです。しかし日本のような縦書き文化圏では伝統的にどうだったのでしょうか。縦書きと横書きの問題を考察する場合はこういう視点も必要になってくると思われます。


近いところで、今でも使われている原稿用紙は中央で二分され袋とじに対応し、袋とじにすると縦長にはなりますが、基本的に横長と言えます。他方、横書き用の原稿用紙は縦長で、袋とじには対応できない形式になっています。


書籍でも、大型の書籍や字の小さな雑誌では殆どの場合は数段の段組みになっています。横書きの場合ももちろん縦の段組みになる場合があるわけですが、データは確認していませんが、個人的な印象では、日本語の縦書きは英語の場合に比べて段組みになる場合が多いように思われます。新聞や雑誌のように縦の長さが短く、かなり極端な横長ページになると、縦の、一行あたりの一覧性も横書きにそれほど劣ることがなくなるうえ、横方向の(ページ)一覧性が加わり、横書きに比べて優れたページ全体の一覧性が得られるような気がします。


総合的な一覧性は、一概に言えないにしても、しいて言えば、縦書きの方が優れているのではないでしょうか。ページ全体の一覧性は一行の一覧性よりもメリットが大きいのではないかと思われるからです。もちろん、英文や数式の併記への対応を考慮すればそうも言っておられなくなってしまいますが。

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