英語の「System」という用語は、日本語の「系」という言葉と相当強固に結び付けられているようだ。これは特に自然科学方面でSystemが系と訳される場合が多いことに起因しているように思われる。例えば銀河系、太陽系、あるいは循環器系、消化器系、神経系、などである。
しかし数学用語として用いられる「系」の相当語句を英語で調べてみると、「Corollary」という難しい用語が見つかり、これは「System」ではない 。
またもっとも頻繁に「系」が使われるのは「何々系」という言い方で、日系人とか白系ロシア人とか、人種とか民俗について言われることが多かったみたいだが、最近では「お笑い系」とか「美人系」とか、人の特徴や傾向を表す場合にまで、実によく使われるが、こういう言い方がSystemと訳せないことはもちろんである。
ただ、こういう意味での「系」は自然科学や技術方面でも頻繁に用いられ、例えば「ポリエステル系の接着剤」などという場合は実に紛らわしいものとなる。この日本語本来の意味から言えば、この「系」は「System」ではないといえるが、それにも関わらず「System」と訳すことも可能で、結果的に、全体としてはそれ程異なった意味になるとも思えない。但しこの場合でも「ポリエステル・システム」は「ポリエステル系」とは完全に異なった意味を持つことになる。すなわち、ポリエステルを構成要素に持つシステムということになる。結果的にポリエステルを原材料の1つとして使用した複合材料ということになる場合もあり得る。
漢和辞典を調べるとわかるが、系という用語は糸という構成要素からも推定できるように、「つながり」というような意味に由来し、いろいろな意味でつながりや関連性のある全体を表すと同時に、そのメンバーである個体や構成要素を表すことも可能だといえる。というよりも、どちらかと言えば個体を表す場合の方が普通で、その場合「何々系」は形容詞的に用いられている。名詞的に用いられて全体を表す場合は「体系」とか「系統」のような熟語になるといえる。
それに対してSystemは、常に、構成された、あるいは関連性やつながりのある全体を指すものといえる。全体の構成要素である個物や個体にSystemは使えないということだろう。
これは単数形と複数形を区別しない日本語の特性と深い所で関係しているように思われる。
とりあえず、「System」と「系」を相互に翻訳する際には特に注意すべき事柄だろう。
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