2011年12月28日水曜日

『検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定』という呆れた新刊本

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TITLE: 『検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定』という呆れた新刊本

CATEGORY: 「ニセ科学」論議

DATE: 03/08/2011 21:37:34
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書店で表記の新刊本(文芸社)が目についたので手に取ってみた。

表題からして、おかしな本であると私には思える。というのは、もう一般的に通用するようになってしまった陰謀論という言葉自体、奇妙で無責任な意味不明の造語であると思われる上に「パーセントで判定」という副題がついているからである。中を覗いてみると著者が「陰謀論」の範疇に含めている各種の言説についてそれぞれ「真実度」なるものをパーセントで表示している。これが冗談やユーモアでなく科学であるというのなら、まったくこの本こそが「ニセ科学」(私自身この言葉を認めないが)であり、無責任なでっち上げであることを告白しているようなものである。

いやしくも科学の名において何かをパーセントで表すというのであれば、どのようなデータ用いてどのように計算したかという、計算式を示さなければ何の意味もない。そしてそれを「真実度」と呼ぶとすれば、それは著者がその計算式に恣意的に与えた定義あるいは単なる命名に過ぎない。もちろんその計算式があったとしての話である。抽象的な「真実度」に正確な意味などありえない。意味があるとすれば幻想のようなものだろう。科学技術の専門分野には真実度といった概念があるようだが、それらはその分野において正確な計算式が定義されている筈である。

ちょっと立ち読みをさせて貰うと、最初の方に「地球温暖化はでっち上げだという説」という項目があったのでざっとめくってみた。それによると、地球温暖化はでっち上げだという説の「真実度」は0パーセントだそうである。内容を読んでみても、権威に訴えるだけの科学的に見える用語を使って断定的な表現をしているだけであって、何の議論も論証もない薄っぺらな文章である。そもそもこういう問題を科学的に論じようというのであれば「でっち上げ」などという言葉を持ち出したりすると、ただでさえ複雑きわまりない問題をさらに複雑曖昧にするばかりである。「でっち上げ」などという言葉は使うべきではないだろう。「地球温暖化否定説」とか「地球温暖化懐疑説」とでも言うべきだろう。こういう問題にパーセントを出そうなど大それた事を試みるというのであればなおさらである。

他はぱらぱらとめくってみただけだが、真実度が0パーセントという項目が多く、0.01パーセントというのもある。取り上げられている項目も一貫性があるとは思えないが、どうやら盛んに「疑似科学」批判を行っている人たちが批判の対象にしている言説を集めたと言って良さそうである。「疑似科学」批判の対象と言えば初期にはオカルトや超常現象などだったように思うが、それがいつの間にかそこに政治的な言説が取り上げられるようになり、「陰謀論」という範疇ができあがって来たのではないか。これは筆者の推測。

それにしても何という意味の混乱、科学の乱用だろうか、と思う。科学技術自体の暴走も問題にされる昨今である。科学者、科学的であるこを自認する人達がこんな本を書いているとすれば、科学の信用を落とすばかりだろう。

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